ビザーマジックの手順研究

現代的アプローチによるビザーマジックの考察

おお、敬愛すべきプロマジシャンたちよ! 今こそ、原始に立ち還れ!

原始奇術(ここでいう原始奇術とは、不可思議な神通力として表現する手品のこと)というのは権力と密接な関係にあったはずなのだ。そして、この原始奇術という芸能は、演技者にカリスマ性を与えていた。と、同時にそのカリスマ性は大衆からは危険視され、最終的に生きる権利を剥奪されるのだ。カリスマというのはいつの時代も短命である。諸君、思い出したまえ。その結果が、あの魔女狩りというやつだ。1980年代に燦然と輝いていたミスターマリックが、愚かな聴衆どもからインチキだと囃し立てられ、追い詰められた悲劇を思い出すがいい。時代が安定すれば力を持つものは、力のない大多数の愚民どもから、敵視されるのだ。

おお、才能のあるマジシャンというのは、いずれにしても破滅する運命にあるのだ。

500年以上前(『妖術の開示』が出版されるより以前)の奇術というのは、お茶の間の向こうにいる愚民どもを楽しませるといったような、程度の低い芸能などではなかったはずなのだ。はるか昔のマジックというのは、世界を転覆させる可能性を秘めた、極めて崇高なチカラだったはずなのだ。

今時のプロマジシャンは、マジシャンの地位を向上させるために、テレビジョンなどで種明かしをして、マジックオタクのみなさんから罵詈雑言を浴びながら自身の魂を犠牲にしてまでテジナを啓蒙してくださっているようだが、残念ながらそのような行為こそが奇術の神秘性を損なわせ、マジシャンのカリスマ的地位を没落させてしまっているのだ。なんたる悲劇であろうか! 歴史を見たまえ。妖術の秘密を開示するというのは、愚民どもに平伏して白旗をあげるということなのだ。

そもそも今の世の中でマジシャンの地位が低い根本的な原因は、世界が平和であるからなのだ。世界が平和である限り、カリスマが求められることはない。

つまり、マジシャンの地位を高くするために最も重要なことは、世界を混沌に陥れることである。カリスマが必要な時代になれば、自ずとマジシャンの地位も昇り竜の如く上昇することだろう。

世のプロマジシャンたちよ、よく、心に留めておくがいい。わたしの野望は、世界を転覆させることだ。原始奇術の呪術的な輝きを現代に蘇らせるためにはそれしかない。マジックを芸術にしたいなどといっている連中は、至高性が低い。もっと高みを目指すべきだ。そもそも手品というのは芸術などではなく、人心を支配する政治的な権力であったことを思い出すべきなのだ!

我らマジシャンの地位の向上のために!

ビザーマジックとは何か。

マジックの分類上、ビザーマジックとは原始奇術のことを言うのであるが、そもそも原始奇術とは何かというと、魔術的、神秘的な儀式を体現したものであると考えられる。例をあげれば古くはモーゼの奇跡、キリストの奇跡、日本で言えば卑弥呼の雨降らし、安倍清明の取り出し術などがそれにあたるのではないだろうか。

そして、わたしの拡大的な解釈よればビザーマジックというのは、人間の精神に強い影響を及ぼす手品現象であり、つまり、演出次第では手の中に消えるハンカチのネタですらビザーマジックとなりうるわけである。現実と虚構の境目を崩壊させることを目的とする手品行為。それこそが、わたしの求めているビザーマジックである。

このブログでは、わたしのあらゆる精神と知力を尽くして、ビザーマジックの極意を探求していこうと思う。